本年度は、近年問題となっている紛争後社会における民主化の課題に国際社会はいかにこたえたらよいのかという問題を中心に研究を進めた。民主化支援の総合的枠組みを構築するためには、国際社会にとって焦眉の課題である復興支援・平和構築における民主化支援の意義と限界を明らかにすることが必要と考えられたからである。幸い本年度はかねてより準備してきた欧州委員会の支援による「EUインスティテュート関西」が発足したため、副代表としてその統括業務にあたるとともに、オープニング記念国際シンポジウムとして「人道危機と市民社会の役割」(2005年10月3日開催)を企画し、モデレーターを務めた(英語による報告書あり)。このシンポジウムでは、東ティモールなど紛争後社会における民主化の過程においてNGOなど市民社会の国際的なネットワークが果たした役割を議論すべく、内外の著名な研究者・実務家と協議を重ねるなどして準備を進めた。この国際シンポジウムによって、民主化支援における諸国家・国際機関・NGOの複雑な関係がかなりの程度明らかになり、また今後更に探求すべき課題が浮き彫りになったと考えている。また内外の専門家とのネットワークを形成することができ、今後の本研究の進展に大いに有益であった。本年度はこうした一連の業務のため、予定していた海外出張を延期せざるをえなかった。したがって、本研究の成果の公表は、本年度予定していた海外出張を来年度に行い、インタビューなどによる最終的なデータ収集を行った後にせざるをえなくなった。
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