米国ワシントンにて「知的財産委員会(IPC)」の事務局を運営したコンサルタントに対する訪問調査を行い、IPCの設立経緯、組織、財政、構成メンバーの役割等に関する基礎データを収集した。また、IPCが米国内及び海外の政府・産業界に対して行った圧力活動の概況を把握し、関連する資料を入手した。 上記調査の結果、IPC結成以前の米国多国籍企業の圧力活動とIPCとの連続性や、IPCと通商代表部(USTR)との協調関係が新たに判明した。IPCの中核メンバー(IBM及びファイザー)は、IPC結成に先立ち、大紋領貿易交渉諮問委員会(ACTN)を利用して米国政府、特にUSTRに対する圧力・啓蒙活動を展開しており、これが米国政府の知的財産権政策(TRIPsをGATTのアジェンダにすべきことなど)の形成を左右していたことが確認された。ACTNがまとめた政策提言はその後の米国の政策そのものであり、これを起草したのが上記コンサルタントであった。そして、IBM、ファイザー、コンサルタント、USTRの協議の結果、日本・欧州の政府及び産業界から支持を取り付けるために結成された圧力団体がIPCであった。 一方、日本国内では2つの訪問調査を行った。第一は、経団連(現・日本経団連)に対するもので、IPCとの関係を明らかにした。これまで経団連はIPCの同調者と見られていたが、この調査から、実は経団連は米国の知的財産権政策に反対しており、これを国際交渉の場で「是正」させるためにTRIPs交渉を行うというIPCの提案を支持したことが新たに判明した。 国内訪問調査の第二は、日本国際問題研究所のスタッフ(現在は広島修道大学の教官)に対するもので、同研究所主催の研究会において経団連と外務省がIPCの活動を監視し対策を講じていたことが新たに判明した。
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