研究課題
基盤研究(C)
本研究では、EUの拡大プロセスがヨーロッパ大陸にどのような「効果」をもたらしてきたのかを実証的に検証した。EU統合の歴史は、加盟国の「拡大」の歴史であり、EU統合の「深化」と「拡大」が相互に連携する形で発展してきた。特に冷戦後のEUは、内部統合を進展させると同時に、ヨーロッパ大陸全体に安全保障を提供し、経済的繁栄をもたらすという拡大「効果」が、加盟申請諸国からも、またEU側においても期待され、実際、1995年のEFTA諸国のEU加盟の際にも、また2004年の中・東欧諸国および地中海諸国へのEU拡大プロセスにおいても、そうした拡大「効果」が認められた。また、中・東欧地域における民族紛争等の未然防止にもEU拡大が一定の役割を果たしていることが確認できたが、南北キプロスの問題は未解決のまま、南キプロスだけがEUに加盟することになったことが例証しているように、EU拡大がすべての地域紛争に対する万能薬ではなかった。しかし、キプロス問題においても、EUへの加盟プロセスが南北キプロス間の対話を再開させる契機となり、またトルコの同問題への対応に変化が見られるなど、EU拡大「効果」がここでも指摘できる。トルコへのEU加盟に関しては、2005年10月に加盟交渉が始まったが、トルコがEU加盟を目指して国内改革を積極的に進めていることは、同国に対してEU拡大「効果」が働いていることを示している。このように、EU拡大は、広範囲なヨーロッパ大陸に平和と安定をもたらす「効果」があることが検証できた。また、EUの拡大効果は、EU加盟国のみならず、欧州近隣諸国政策(ENP)を通じて、EUの周辺諸国に対しても、安定と繁栄を提供する手段として活用されている実態が明らかにできた。
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EU・Seio Seijiron, Mineruba-shobo Forthcoming
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Mitahyoron May