平成16年度は、第1に「未承認(unrecognized; conjectural)標章問題」について各事例の背景と経過について考察した。具体的には、1)アフガニスタン、2)キプロス、3)インド、4)イスラエル、5)レバノン、6)スーダン、7)スリランカ、8)シリア、9)タイ、10)中央コンゴのそれぞれの未承認標章と、マレーシアの社名変更の背景と経緯について資料収集および調査を行った。第2に、「未承認(unrecognized; conjectural)標章問題」の背景にある<植民地支配後>の状況、植民地時代の赤十字活動のあり方、標章問題解決(あるいは未解決)のプロセスについて、国内および英国において調査を行い、専門家と意見の交換を行なった。第3に、上記の「未承認標章問題」について考察する際の議論の枠組、視点の置き方について検討した。これについては、とくに研究代表者が平成12年度〜14年度まで科学研究費補助金(基盤研究(c) (2))を受けて遂行した和解史研究と関連させて、植民地後和解の問題としてアプローチしうるか否かについて、国内外の専門家と情報や意見を交換した。第4に、日本赤十字社の資料の調査と整理を日赤豊田看護大学図書館において行なった。第5に、平成17年1月〜2月にかけて、研究代表者の本務校において、国際人道法と赤十字・赤新月標章問題についての公開セミナー「戦争とヒューマニティー」及びワークショップを開催した。この成果については、現在パネリストとともに研究報告書を準備中である。
|