研究課題
基盤研究(C)
本研究では、戦争・紛争などの限界状況における人間の尊厳の保護という理念の普遍性とそれについての国際的合意がなされている一方で、それを実現するためのシンボルとしての保護標章(白地赤十字章)がいかにして複数化したか、統一や和解の可能性はあるのかを問題意識として遂行された。具体的には、戦場における「識別」と「保護」、統一標章の採択、標章複数化の起源、標章拡散防止のための努力などを調査しつつ、関連する諸問題すなわち国際赤十字運動の非ヨーロッパ・非キリスト教起源の国家における受容・抵抗・変容、戦争犠牲者の保護と国民国家のアイデンティティとしての「宗教」ならびに「文化」の軋轢、人道法と無差別攻撃、植民地後和解などの問題について考察した。各年度の研究成果は、2003年度は保護標章複数化についての基礎的検討、赤十字国際委員会アーカイヴス等での資料調査、2004度は「未承認標章unrecognized emblems」の事例研究、植民地と赤十字社、資料調査、および研究会等での報告、2005年度は、引き続き未承認標章問題の検討、和解論からのアプローチ、国際関係におけるシンボル、日本赤十字社等での資料調査、「第三標章」採択についての情報収集等、論文等の発表などであった。これらの研究成果をふまえて、以下について所見を得た。1.概論(1)標章問題の起源と歴史的経緯(2)保護標章問題の背景:平和構築観の変遷と戦場の人道化、2.「第三標章」問題:拡散防止への努力と成果、(1)「第三標章」をめぐる動向(2)「the red crystal標章」(第三議定書)の採択、3.赤十字と植民地(1)未承認標章と脱植民地をめぐる問題(2)「植民地の時代」の国際赤十字運動と赤十字社、4.戦争の残虐化と「保護標章」(1)戦争の残虐化と戦傷病者・捕虜・民間人、(2)「核の時代」における保護標章問題の変質:核兵器と「迅速かつ強力な<平和>」。現在、本研究に基づく国際関係資料集と単著の刊行を準備中である。
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The International Review of the Red Cross 866(未定)
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University of Tokyo Press