当該研究は、1962年10月のキューバ・ミサイル危機以降、1968年のボリビア紛争の終息とチェコスロバキアへのソ連の介入(「プラハの春」の挫折)までの米・キューバ関係を分析することで、世界システムにおける中央・周辺関係が再編築されたことを描くことを目標とする。仮説的には、重要なことだが、発展形態や蓄積体制の他律性を残したまま、周辺部を囲い込むという「異常事態の恒久化」というメカニズムが築かれ、したがってこれが冷戦後の現代にまで残存している可能性があるということである。但し、3年間に渡る予定の研究であるので、2003年度には以上の全体的な研究の枠組みを作る前提作業を行った。 第一の作業として、ジョンソン政権期の「国家安全保障ファィル」(1961〜63年、1963〜1969年)の分析、第二に、CIA「調査報告書」(1946〜76年)の分析、第三に、ケネディ政権期の「国家安全保障ファイル(キューバ関連)」(1961〜63年)の分析を始めた。これらは膨大な量になるので作業の初期的段階にあるが、予想外に欧米諸国の存在が60年代に米州関係にも大きいことが発見された。来年度にはメキシコ政府(大統領府、外務省)とキューバ政府(国家評議会、外務省、共産党)の資料をできる限り入手し、分析を多面的に行いたい。 こうした史料の分析と並行し、冷戦期の権力構成についての理論的研究を行った。問題点としては、国家権力と世界資本主義の二重性、国家の外部性としての国際関係、組織的暴力の現代的編成などの考察を進めた。
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