研究課題
基盤研究(C)
本研究は、米国政府とキューバ政府との関係(1962〜68年)にさかのぼって考察し、その中央部での冷戦と周辺部での冷戦の交錯したありさまが、今日の冷戦後の世界の構造要因として残存していることを示した。いわば「異常事態の恒常化」というメカニズムであり、その基底にあるのは、ウェストファリア・システムという原理を超えて、国境を越えて作用する権力の制度化が進んでいる現象である。ウェストファリア・システムは、主権を仮託された領域国家が互いにその存在を承認するというモダンの国際政治の基本構造である。だが、冷戦の中央と周辺という階層構造の構成は、主権のある国民国家という「原理」からの逸脱が常態として認知され、また構造化していたのである。そこでは、西半球における「革命の輸出」と「反革命の輸出」との熾烈な戦いが、まず第一に、中央部冷戦からの周辺部への波及として捉えられた。だが第二に、周辺部冷戦からの中央部への波及として、社会主義イデオロギーという「他者」をヘゲモニー構成に内部化するというメカニズムが見られた。こうしたなか、主権国家の正規軍どうしの戦いではなく、非正規戦のプロトモデルが作られ、国境を越えて暴力を作用させた。こうした事態は、グローバリゼーションと言われる今日の状況を先取りしていた。あるいは、グローバリゼーションによって「異常事態の恒常化」はさらに明瞭に顕現することになった。そこでは、「新しい戦争」が生まれ、外交が国際関係を管理するという建前が崩れ、外交関係が多様な国際関係の中の一つに相対化されている。グローバル・ガヴァナンスという捉え方は、こうした変容を繁栄したものである。本研究は、当初の計画より、実証研究を応用させた国際関係理論の研究に結果的に比重を移し、以上のグローバリゼーションの中での現代世界の分析にいくつかの成果を見た。
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