研究概要 |
日常的な経済活動から生ずる温室効果ガスが蓄積されることから、地球全体の天候に極めて複雑な形で影響が及ぶのが地球温暖化問題である。しかも、蓄積された温室効果ガスは長期間にわたって存続するために、我々の現在の経済活動から生ずる温室効果ガスが、はるか将来の世代の環境に影響を及ぼすことになる。かくて、地球温暖化問題を規範的な観点から考察するためには、世代間衡平性の問題を検討することが不可欠となる。 鈴村=篠塚(2004,『経済研究』)において,我々は,1960年代以降の世代間衡平性問題の研究の主要な成果を展望して,研究の現状の評価を行ない,この分野において一層の研究が期待される問題のいくつかを指摘した。とりわけ、シジウィック=ピグー流の手続き的衡平性の公理に代えて、帰結主義的衡平性の公理を使った鈴村=篠塚の新しい研究成果の一部を紹介した。この結果に関連した研究を行っているYongsheng Xu氏(ジョージア州立大)および原千秋氏(京都大学経済研究所)を共同研究者に迎え入れ、4人の研究成果の取り纏めを行っている。 今年度は、須賀晃一氏(早稲田大学)、鈴村興太郎氏(一橋大学経済研究所)および蓼沼宏一氏(一橋大学)との共同研究により、重複世代経済における世代間衡平性と効率性の問題にも取り組み、新たな研究成果を得た。鈴村=篠塚(2004,『経済研究』)で紹介した三つの世代間衡平性概念の間の論理的関係を明らかにした。得られた研究成果を、2005年3月10〜12日に箱根「山のホテル」で開催されたInternational Economic Association Roundtable Meetingにおいて、"Equity and Efficiency in Overlapping generations Economies"というタイトルで報告した。同コンファレンスで報告された全ての論文は、参加者による査読を経てConference ProceedingsがJohn Roemer and Suzumura Kotaro eds. Intergenerational Equity and SustainabilityとしてPalgrave社から出版される予定である。上記論文の主要な結果を、厚生経済学の専門家以外にもアクセスできるように、日本語による解説論文も作成した。これは、鈴村興太郎【編】『世代間衡平性の論理と倫理』(東洋経済新報社)、第13章として公刊される予定である。
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