研究概要 |
主に次の二点に重点をおいた所究を行った。 1 日本の銀行部門の規模及び健全性の指標となるようなデータの収集、整理。 2 日本の銀行部門と金融政策の関係を説明すべく動学的一般均衡モデルの設定。 この研究の目的は銀行部門の規模や健全性に金融政策が如何なる影響を及ぼすかを分析することにある。まず第一に金融政策に関する指標と銀行部門の規模及び健全性に関する指標の相関関係を調査するため、日本の銀行部門における雇用者数、付加価値の総額、資産及び負債などを時系列にそったデータを作成した。とりわけ負債に関しては貨幣との密接な代替的性格を有するものに焦点をあて預金の時系列データセットをも別途作成した。このような銀行部門における変数と金融政策の指標となるような変数の間に如何なる相関関係があり、それがどのくらいの大きさであるかを正確に分析できるものがある事が必要である為それらの点に関しては特に注意をはらった。 次にこのデータ間における相関関係の事実を裏付けるような理論をいくつか設定した。私が想定するモデルでは銀行の提供するサービスは家計や企業の活動に貢献する。このような前提のもと不完全競争下において銀行部門でインフレ率の4%から1%までの下落が銀行部門の規模や健全性にどのような影響を及ばすかを考察した結果,もし政府の介入がまったくないものであれば,その規模や短期の利益は急激に収縮してしまう(家計の銀行業への需要の低下に伴って銀行部門の雇用率は40%も下がる)。現に日本のデフレ期に政府は資本注入,ペイオフの延期等、銀行部門を援助する策をいくつか打ち出した。私が設定したモデルでは数ある政府の政策のうち、銀行部門の付加価値のみならず、雇用面でももっとも銀行部門の回復に役立つのは預金保険であるとの結論に至った。 現在私は内生成長をも考慮してモデルを一般化し、銀行部門が経済成長に影響をあたえるような分析をし,また新たな金融政策の可能性について研究を進めている。
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