銀行とマクロ経済に関するこの研究は3つのトピックに焦点をあてて行われた。最初のトピックとして、人口統計の変化が家計需要の代替的資産クラスに与える影響を考察した。銀行のサービスに対する家計の需要はその家庭の年齢によって異なる。若年者の家計は圧倒的に負債者であり、高齢になるほど銀行にとって主な預金供給者となる。人口統計の変化は負債者と預金者の割合を変え、その結果市場の利子率と銀行の健全性に影響を与えている。この研究は人口統計変化への市場金利の反応を計測するために世紀の変わり目までさかのぼったデータを使用し、貯蓄率と実質金利の将来的発展のための人口変化予測も考察した。 第2のトピックは金融政策と銀行の健全性の相互作用についてである。データを集め、1990年の7%から1998年の0%まで名目金利が下落した影響と、同時に起こった他の資産の下落が銀行の健全性に与えた影響を計測するモデルを考案し、シミュレートした。このモデルは1990年代に日本が経験した銀行の健全性と銀行における雇用が急速に減少したことを再現した。次に政府の雇用と銀行収益に対する政策代案の効果を考察したが、このモデルにおいては預金保護は銀行における雇用にとってはよいが、収益性にはなんの影響も与えない、という結果が出た。逆に資本増強は収益性を回復するが、銀行の雇用は救済されないという結果になった。 第3のトピックとしてはマネーサプライの増加が名目金利ゼロの状態で信用経路にどのように影響を与えるかを考察した。名目金利がゼロの状態では貨幣は他の短期資産の完全なる代替物であり、幅広い意味でのマネーサプライのルールは実質的な影響は持たない。しかし、銀行、負債者、預金者の最適化の問題を注意深くモデリングしてみると、マネーサプライが十分に増加した場合、預金者の資産に対する需要には必ず影響があり、実質的な効果を持つことを発見した。
|