研究概要 |
自由貿易協定を域内国間のネットワーク形成と捉えネットワーク形成ゲームの枠組みで分析していくのが本研究のねらいである。安定的なネットワークがどのような条件下で多くの自由貿易協定を含むのかを見ることにより、例えば現在盛んに締結されている自由貿易協定がどこまで進むのかについて予見可能となる。 これまで海外共同研究者である小西秀男氏(Boston College)と共にこの問題に取り組んできた。共同執筆論文"Free Trade Networks,"COE/RES Discussion Paper Series, No.38,Hitotsubashi Universityでは、国々が対称的なときに安定的となる自由貿易協定を求めた。そこでは、全ての国が他の全ての国々と2国間自由貿易協定を結ぶといったグローバルな自由貿易協定ネットワークがどんな場合でも安定的になることを示した。 また我々は、国家間のトランスファーを許したときに対称性の条件がどの程度緩められるか分析した。"Free Trade Networks with Transfers,"unpublisbed manuscriptでは、国際トランスファーを許せば、産業構造等が大きく異なる非対称的国家間でも自由貿易協定の締結が進み、上述した命題が成立することを示した。 さらに、自由貿易協定の問題に取り組む際に有益な指標を与えてくれる厚生分解(welfare decomposition)についての論文"A Welfare Decomposition in Quasi-Linear Economies,"forthcoming in Economics Lettersも小西秀男氏と共同で執筆した。
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