消費における合理的習慣形成に関する研究成果を3つの論文にまとめた。 (1)Gombi and Ikeda(2003):消費に関して習慣形成がおこなわれる2国経済モデルを考え、所得移転の厚生効果を分析した。習慣形成の程度が2国間で異なる場合に、異時点間交易条件である金利を変動させることで所得移転が支払い国の厚生水準をかえって改善させ、受け入れ国のそれを悪化させる可能性を指摘した。この論文は、2003年度日本経済学会秋季大会で特別招待講演として発表され、Japanese Economic Reviewに掲載された。 (2)Ikeda and Gombi (2004) Habit formation in an interdependent world economy:習慣形成の行われる2国経済モデルを用いて、消費-貯蓄、経常収支、金利、各国の経済厚生水準がどのような要因に依存するかを分析した。解の導出にあたっては、厚生経済学の第2定理を用いて集計的な世界効用関数を構成し、簡便な分析法を提案した。また、習慣形成下においてどれほど容易に貯蓄できるかをあらわす所得インデックス、「surplus income(余剰所得)」を定義し、2国の内余剰所得の大きい方の国が債権国に、小さい方の国が債務国になることを明らかにした。厚生含意として、習慣形成の下での異時点間交易条件効果が、窮乏化成長を引き起こす可能性を示した。 (3)池田(2003):合理的習慣形成理論に関する広範なサーベイを行った。展望にあたっては、第1に、時間選好、異時点代替弾力性、危険回避度といった選好パラメターと習慣形成の関係を明らかにし、第2に、消費の過剰平準化やリスクプレミアムパズルなどの定型的事実に対する実証含意を明確にし、第3に、消費=貯蓄の問題から、経済成長、経常収支、労働供給など可能な限り広い範囲の研究を取り上げ、習慣形成の含意を考えた。
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