資本設備の耐用年数の有限性を明示的に組み込んだ離散型の設備投資モデルを構築し分析を進めた。企業の計画視野よりも設備の耐用年数が短く、かつ生産関数が規模に関して収穫逓減的である場合、投資の調整費用関数の形状が、不確実性と設備投資の関係を決定する際に大きな役割を果たすことが明らかになってきた。この点については、Mathematicaを用いた数値計算で最適投資関数の性質をより詳しく調べているところである。 不確実性下の投資行動において、企業の危険に対する態度(危険回避)と異時点間の代替性が果たす役割を明確に区別するために、成長理論において用いられている「非期待効用(Non-Expected Utility)」を導入した連続型モデルを構築し分析を行った。その結果、従来の期待効用最大化モデルでは説明できなかった、非常に危険回避的な企業は危険中立的な企業と同じように振舞うというやや逆説的な結論が、異時点間の代替の弾力性を用いてうまく説明できることが明らかになった。経済学的含意をより明確にするために検討を加えている段階である。 不確実性を避けようとする行動(不確実性回避)が設備投資にどのような影響を及ぼすのかを分析するために、ナイト流の不確実性(Knightian Uncertainty)とそれを扱える確率過程についての研究を始めた。試みとして非常に簡単な連続型モデルを用いて投資関数を求めてみた。その結果、ナイト流の不確実性は従来の不確実性(平均保存的分散の拡大)とは違う影響を投資に与える可能性があることが分かってきた。 実証研究ついては、日本の製造業のデータを使ってGARCH-in-Meanモデルあるいは多変量GARCH-in-Meanによる推定を行うために、従来の実証研究に関するサーベイを行なうと同時に、必要なデータの収集・整理を行っている段階である。
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