研究課題
本年度の研究では、貿易セクターと非貿易セクターの関連について、特に非関税障壁の効果に着目して、実証的な観点から分析した。一般に、非完全障壁が課されている財の貿易時点での国際価格のデータは存在する場合が多い。しかし、その財の国内価格を直接データとして把握することは難しい。国内価格の代理変数として、消費者価格や卸売り価格が用いられることが多いが、それらの価格はサービス・セクターによって輸入後に加えられる付加価値を含んでおり、そうした付加価値を反映しない通関時の輪入品の国際価格とは性格を異にするものである。輸入品を国内で直接取引きする市場が存在せず、輸入されたものに付加価値が加えられた商品を取引する卸売り市場や消費財市場しか存在しなければ、輸入品の国際価格と直接、比較可能な国内価格のデータは存在しえず、輸入品とその他の財の限界代替率によって定まる国内価格を、帰属価格として、理論的にとらえることができるだけである。本研究では、非関税障壁の課された輪入品とその他の財の限界代替率をその財の間の効用関数を推計することで求める手法を示した。このような設定のもとで、効用関数を推計するためには、通常の、コブ・ダグラス、ストーン・ギアリー、AIDSといった効用関数を利用することはできない。本研究では、この問題を解決するために、階層的な合成財に関する効用関数の存在を仮定し、それを推計する手法を確立した。この手法を1980年代まで課されていた牛肉の輸入数量規制の効果の分析に応用し、そこから発生したデッド・ウェイト・ロスが相当の大きさになることを確認した。この研究は研究代表者と代表者の指導する大学院生(Rika Takahashi, Hideo Mizuno)を中心に行われたが、研究分担者との討論が大きな貢献をしたことを付け加えたい。
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