研究課題
1.マインツ市立文書館、バイエルン州立図書館(ミュンヘン)、ハンブルク州立・大学図書館、ハンブルク州立文書館各施設所蔵の23ページ本を実検し、以下の新知見を得た。(1)T.クチンスキーは、《K.ショッテンローエルの著作に掲載されたファクシミリの原本がミュンヘン本である》と推定した。だが、ミュンヘン本の精査によれば、その推定には疑問のあることが分かった。したがって、その推定に基づいて、報告者が昨年提起した《表紙の意匠は異本1〜4間で異本1、異本2および異本4と3種の相違がある》との推測のうち、異本1と異本2の表紙は異なる意匠であるとの推測は誤りであり、これを除く《表紙の意匠には異本1〜4間で異本1・2と異本4の2種の相違がある》と結論すべきであることを確認した。(2)23ページ本の第2折りに使用された8ページ分の印刷用紙の表裏を精査すると、ミュンヘン本、両ハンブルク本が表刷りであるとすれば、マインツ本は裏刷りであることを始めて確認した。これは、23ページ本の印刷についてのW.マイザーによる推測を裏付ける一物証となりうるものである。以上の新知見は昨年の研究実績の一部である「『共産党宣言』初刷の確定」の行論を改訂する形で、最終報告に盛り込む予定である。2.10月に中国・武漢大学で開催された国際シンポジウム「マルクス主義と当代世界:国際学術検討会」に招聘されて、30ページ本刊行の背景と考えられる1850年当時のマルクスおよびエンゲルスをめぐる状況に関する研究成果の概要を報告した。3.「日本における『共産党宣言』の翻訳=影響史」を発表し、そのなかで、長谷川早太名義の邦訳は当時『共産党宣言』の初版に擬せられていたヒルシュフェルト版を底本とするものであることが分かるが、本研究の出版史の観点からみると、そのような底本利用は訳者が櫛田民蔵であることを指示する傍証となる旨を説いた。
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Discussion Paper on Political Economy, Graduate School of Economics and Management, Tohoku University 46
ページ: 1-9
Discussion Paper on Political Economy, Graduate School of Economics and Management, Tohoku University 35
ページ: 1(1-5)-14