2004年1月31日(土)に学術総合センターで行った国際セミナー「ベヴァリッジの経済思想とその後」(英語のみ)の開催が、今年度の最大の成果である。英国からAlan Booth博士(Exeter U.)を招き、基調講演「イギリス福祉国家の視点:ホブソンからサッチャーまで」を発表してもらった。この中で3人の知識人が福祉国家の展開とともに、国家と市民の関係そして社会と経済の関係を議論する基盤になったことが示された。続いて小峯による「ベヴァリッジの経済参謀」が発表された。ここでは福祉国家の提唱者であるベヴァリッジが、いかに管理経済を初期から提唱し、その影響力がケインズの失業救済策を含む経済政策助言活動につながったかを示された。 このセミナーを支えるため、多くの準備活動を行った。2003年4月の経済学史学会東北部会での発表「在外研究報告:PROとLSEの文書をめぐって」、2003年5月の経済学史学会全国大会における発表「初期ベヴァリッジの経済思想」でこれまでの成果を発表した。2003年8月〜9月にはイギリスに渡り英国経済思想学会に出席し、議論を深めた。同時に、LSE、PRO、大英図書館を閲覧し、ベヴァリッジやウェッブ夫妻に関する一次文献を収集した。これらと購入したベヴァリッジ文書マイクロフィルムを用いて、失業論の高まりが次第に社会保険論とどのように関連するかの基礎文献が調えられた。 その他、政府がどの程度経済に介入すべきかという議論(新自由主義や集産主義)の考察に、「1940年代ヘンダーソンの自由主義」を執筆した。 なお成果は日本語だけでなく、英語でも発表するように心がけた。
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