平成16年度の研究を4月から開始し、7月初めには早稲田大学現代経済研究所および一橋大学社会科学古典資料センターで19世紀初めの時期のスイス・ロマンドおよびイギリスを中心とした関連所蔵図書の調査を行なった。これによりエティエンヌ・デュモンおよびJ.-B.セーに関連した経済思想史上興味深い文献を入手することができた。そして11月下旬に一橋大学社会科学古典資料センターで行なった資料収集では、19世紀前半のフランスおよびスイス・ロマンドに関連した経済学文献を調査、収集した。さらに2月中旬に、一橋大学社会科学古典資料センターで行なった調査、収集においては、19世紀前半の英語およびフランス語文献の中からジェーン・マーセットに関連した資料も収集することができた。 今年度は、これらの文献、資料と従来から収集していた文献、資料をあわせ、スイス・ロマンドの経済思想を中心に分析を進め、それによってスイス・ロマンドの知識人達が19世紀前半の西欧の経済思想の展開において従来考えられていたよりもずっと重要な役割を果たしていたことが明らかになった。この場合、スイス・ロマンドの中でも特に同時代のイギリスの知識人たちと深い人的つながりを持っていたジュネーヴの知識人が重要である。なかでもピエール・プレヴォはジェーン・マーセットとの関係をはじめ、従来以上に大変重要な存在であることがわかった。こうした研究の成果は、その一部が、「ジャン=バティスト・セー--習俗の科学から実践経済学へ--」として鈴木信雄編『経済学の古典的世界1』に収録され、日本経済評論社から今月末に出版される。
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