研究概要 |
平成16年度の研究において、時系列データにおける高次モーメントの従属特性の統計的推測を行うための理論的概念枠組みを構築した。また数値計算のための、アルゴリズムを開発した。基本的接近法は、対象時系列とその二乗系列からなる多変量時系列にたいして2次定常過程の統計的推測理論を適用するものである。この方法により、時系列の2,3,4次の時間的従属性をモデル化することが可能となる。長期従属性をモデル化するためには、時系列の周波数表現にもとづくWhittle尤度関数を用いた。またWhittle尤度関数にもとづく漸近的統計的推定・検定理論を修正して適用した。非定常長期従属多変量過程にたいしては、Johansen誤差修正モデルを拡張した分数共和分モデルと、その性質を考察した。この接近法により、これまでの単位根過程の漸近理論を拡張した。とくに、分数ブラウン運動の関数中心極限を導出し、それにもとづく共和分ランクのWhittle尤度比検定の漸近的分布を導出することができた。実データへの適用にかんしては、東北大学シナジー・センターのSX-4/128H4を用いて大規模なコンピュータ・シミュレーションを実行して、Whittle尤度関数にもとづく共和分ARMA推定・検定の小標本数での効率性を調査しつつ、数値的に実行可能なアルゴリズムを開発した。高次モーメントにおける従属性は、対象となる時系列の非ガウス性と密接に関連するが、平成16年の研究においてはさらに、この非ガウス性の除去を目的として、従来のBox-Cox法を修正した非線形データ変換法(修正Box-Cox法)を開発し、そのWhittle尤度にもとづく推定・検定の漸近理論をあたえたともに、小標本での特性をモンテカルロ法により調査した。
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