研究概要 |
本研究では、経済時系列分析において様々なモデル分析の基礎となるガウス性ならびに線形性の統計的検定法を多変量時系列の枠組みへ拡張した結果に基づいて,多変量時系列の統計的モデリングについて研究し,多変量経済時系列に対する統計モデルの体系的構築を目指し、さらにその応用として、マクロ計量経済モデルや景気循環モデルを始めとして,その他ファイナンスやマーケティングなどの領域で展開される様々な経済・経営動学分析へ応用することを目的として下記の研究を実施した。 1.検定統計量の周辺時系列および相互関係のガウス性・線形性検定への分割に伴う検定統計量の有限標本特性の改良について、周辺時系列(自己相関構造)と相互関係(交差自己相関構造)のガウス性検定に共通する特性である検定統計量の漸近分布への収束スピードの緩慢さに関し,ブートストラップ法を用いてこれを改善する研究を実施した。 2.線形モデルといくつかの非線形モデルのよる予測量を結合して新たな予測量を構成し、結合係数を時変として局所的に線形モデルと各非線形モデルの役割を変えるモデリングを多変量へ拡張する研究を実施した。 3.非ガウス多変量時系列の問題として、多項分布やポアソン分布などにしたがう非ガウスのカウント・データの時系列モデルとそのモデリングについて研究し、状態空間を用いた動学線形ベイズモデルの適用とそのマルコフ連鎖モンテカルロ法のアルゴリズムを検討し、このモデルをマーケティングの売上数量予測モデルとして応用することで、市場全体の拡張・縮小を考慮しながら各ブランドの数量予測するモデリングが可能であることを示した。 4.非対称な市場反応を表現する2変量非線形時系列モデルを閾値型の関数系で与え、実際のPOSデータへ適用して実証研究を行い、その有効性を実証した。その際、売上げ時系列に対して店舗レベルの参照価格が非線形性を駆動する働きをしていることを見出した。
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