1.ウィシャート分布の母集団固有根が無限に拡散する場合に、どのような極限分布が出現するかについて、東大の竹村彰通教授と共同で研究を進めた結果、次のような新しい成果を得た。 (1)母集団固有根が無限に拡散した場合に、基準化した標本固有ベクトルや、標本固有根が、それぞれ正規分布や、カイ二乗分布に収束する事実は、以前に得られていた(JMVA(2005) by Takemura and Sheena)が、極限分布への収束スピード、すなはち、より高次の漸近展開についてnのオーダー(nは、標本数)までの展開を行った。 (2)この漸近展開を利用して、末端での(無限に拡散した状態の近傍での)直交共変推定量の収束がどのようになっているかを把握することに成功した。 (3)上記の結果を利用することで、これまでミニマックスか否かが不明だった、2つの著名な推定量、シュタインの推定量とハフの推定量について、これらがいずれもミニマックスでないことの証明に成功した。 上記結果をまとめて、学術論文雑誌に投稿し、アクセプトされた(11.参照のこと)。 2.これと平行して、母集団固有根の拡散をより一般化した、ブロックごとの拡散についても、竹村教授と共同の研究を行い、次のような成果を得た。これらも、整理して学術雑誌に投稿の準備を進めている。 (1)ブロックごとの拡散をした場合、対応する標本対角成分が、独立したウィシャート分布にしたがう。 (2)それぞれの対角成分の自由度は、上位のブロックの大きさ分だけ縮小する。
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