昨年度までに景気変動に関する確率的方法、特にRegime Switching Model(RSM;局面推移モデル)について、通常の正規分布を利用したモデルでなく、t分布など頑健な分布を利用する効果について検討を加えてきた。本年度は、そうした結果を踏まえて、以下のような点について研究を行った。 1.実際の日本のデータを用いて、様々な条件でどのように結果が異なるのかを検討した。具体的には、用いる景気指標(インディケータ)として、景気動向指数(Diffusion Index ; DI)、景気総合指数(Composite Index ; CI)、累積DI、ロバスト化されたDIについて、それぞれ検討を行った。そのうちCIなどで、特に頑健な分布を利用する効果が明確になった。また、標本期間による違いに関しても、いろいろなパターンについて計算を行い、パフォーマンスがどのように異なるのかを検討したが、あまり一般的な傾向をつかむことはできなかった。 2.RSMの時変的な推移確率のモデルに関して、説明変数に先行指標を利用した推定を行った。その際、1と同様に様々な指標を利用して、どの指標で良好な結果のパフォーマンスが得られるのかを比較検討した。 3.RSM以外のモデルとして、2項回帰モデルを用いた推定も行った。過去の基準日付との対応などで、良好なパフォーマンスを示したが、RSMの方が、若干ではあるが、あてはまりがよかった。 4.理論的な面として、DIは0から100までの値に限定されるため、そうした指標にRSMを適用することは問題であるということが明らかになった。ただし、このような問題を指摘することができたものの、それに対して、どのような対処方法が考えられるのか、という点までは踏み込めなかった。この点は、今後の課題としたい。
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