研究課題
基盤研究(C)
(1)UNESCO統計研究所から入手した2000年の高等教育における留学生の国際間移動データを用いて、留学生の国際間移動に関して、計量経済学的な分析を行なった。商品貿易の分析に用いられてきたグラビティーモデルを用いて、二国間の留学生移動数を、受入れ国および派遣国のGDPと二国間の地理的な距離によって説明する回帰分析を行なったところ、統計的に有意な結果が得られた。財貿易と同様に、受入国および派遣国の所得が高いほど、留学生の移動数は大きく、距離的に離れていると、留学生の移動数は少なくなることが確認された。さらに、このモデルを用いて、アジア太平洋経済協力(APEC)に加盟している国の間における留学促進効果を、切片ダミー変数を用いて分析したところ、統計的に有意な正の効果があることを見出した。(2)国際貿易の特殊要素モデルに教育セクターを導入して分析したところ、留学生を受け入れるかどうかについては、その国における人的資本のレントと賃金水準が関係していることが明らかにされた。高等教育機関が少なく、人的資本のレントが高く、賃金水準が低いために、教育機会が低い国からは、頭脳流出の起こる可能性が高いことが示された。(3)日本の大学生に対するアンケート調査の結果から、すでに留学経験があり、将来所得に関して強気の女子学生ほど、在学中に留学する可能性が高いことが見出された。危険に対する態度は、留学するかどうかの意思決定には、あまり影響を与えないこともわかった。奨学金の付与は、経済的な理由で在学中に留学しない学生に対しては、留学する誘因となることが確かめられた。その一方で、奨学金があっても留学しない、あるいは、留学そのものに興味のない学生が一定数存在することも確認された。このような学生に対して、どのような国際教育を実施していくかも、今後の大きな課題となる。
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広島大学留学生教育 9
International Education, Institute for International Education, Hiroshima University vol.9
商学討究 55
ページ: 89-108
The Economic Review, Otaru University of Commerce vol.55, no.1