研究概要 |
日本企業の取締役会の構成とパフォーマンスの関係を、とりわけ「外部取締役」に焦点を合わせて検討した。第1論文(Who Appoints Them, What Do They Do?)では、1985-90年の「バブル経済」の期間と、1990-95年の混乱と停滞の時期に焦点を合わせて、約1千社の東証第一部上場企業の個別データを用いて検討した。第2論文(Does Relation Banking Matter?)と第3論文(Conflicts of Interest in Japanese Insolvencies)は、銀行を代表とする融資金融機関との関係に焦点を合わせて、コーポレートガバナンスおよび融資先が困難に陥った場合の銀行の役割について検討した。 いずれも、日本企業に関する確立した「通念」が根拠のない主張であり、外部取締役を増やすべきだとするものや「メインバンク」などとの緊密な関係の再構築の重要性を強調するものなどという「通念」に基づく最近の目だった政策論議が誤っていることを示す結果を得た。日本では、融資先企業が困難に陥ると、「メインバンク」などの融資金融機関が救済に乗り出し、再建に努力するとの「通念」がある。しかし、そのようなケースがあるとしても稀であり、もちろん一般的に成立しない、その意味で、日本の銀行-企業間関係が世界的にみて特殊だと言うことも確認した。 同様の論点は世界中の各国で盛んに議論されているから、間もなく公表される論文には大きな注目が集まるはずである。Discussion papersの段階でも、いずれも注目度が高く、多くの研究者・実務家からも好意的な評価を得ていた。
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