今年度、夏休みに訪韓し、韓国開発研究院、対外経済政策研究院、国会付属図書館等を訪れ、資料収集を行った。訪韓後、資料の分析を始めた。大韓民国成立(1948年)以降、韓国の貿易政策がどのように展開されてきたのか、についてまず研究ノートを作成した。具体的には貿易政策を広義の視点で、すなわち輸出奨励政策、為替政策、外資導入政策について基本的特徴を計画経済期及び歴代政権毎にまとめ整理した。 周知の通り、韓国は1997年に通貨・金融危機に見舞われるが、当時の金泳三政権が掲げていた「世界化」というグローバル化が、ジョセフ・スティグリッツ等、多くの専門家が指摘するように、余りにも「早すぎた自由化」に他ならなかったことを、上記の貿易政策を分析することで実証的に明らかにした。次の金大中政権はIMF体制下、一層の自由化・グローバル化を推し進めつつも、いわゆる「学習効果」によって、リスクをヘッジする様々な措置を貿易政策上にも取り組んでいることを調べ上げた。次年度夏頃に学会誌等で「韓国通貨・金融危機前後の貿易政策の変遷」として発表することを予定している。 また、韓国のFTAについては、盧武鉉が大統領就任式の演説で論じた「北東アジア経済中心国家」構想と関連させながら、既存の先行研究には無いオリジナルな分析を行う。具体的には仁川の経済特区に焦点を当てて分析する。仁川の経済特区は物流・金融・ハイテク産業に力を注いでいるが、貿易・FTAといった視点から考察することで独自的な研究成果が達成できる。
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