研究課題
基盤研究(C)
アライアンス形成前後の国際交通(海運と航空)の東アジアを中心にした航路・路線構造とサービス属性の変化について1990年から2000年までの統計データをもとに分析を行った。アライアンス形成を通じて船社は、船舶数の増加や船舶の大型化が可能となった。増大した船隊数の利用によって船社は、ルート数とルートの種類を増加させ、港湾に寄港する頻度を増やし、寄港形態を変更した。その結果、基幹航路上に新たに多くの寄港港湾が登場し、アジア域内で寄港形態の変化が起こり、ハブ港間競争から基幹航路上の港湾間競争へと変質し、アジア港湾問の競争を一段と激しい競争状態におくことになった。これに対して航空会社では、アライアンス形成は船社と同様にサービスポイント、サービス頻度の多様化が進展し、ネットワーク構造が複雑になったが、航空機の大型化は進んでいない。言い換えれば、アライアンス形成によるネットワークの構築は、コスト削減よりもネットワークサービスの品質向上による需要の拡大をもたらしたといえる。アライアンス形成後の各会社の経営成果についてアライアンス形成との関係について実証的分析を航空会社および海運会社の個別需要関数の推定を通してサービス品質に関する顧客の選好について分析した。また、サービス品質・顧客選好とネットワーク構造の関連についてネットワーク効果における需要効果、つまり外部性の存在について解明を試みた。これに対して供給サイドの経済性について費用関数の推定によって分析した。分析結果を総括すると、船社の経営成果はアライアンス形成による費用・供給側面の要因が強いといえる。航空会社の経営成果はネットワークサービスの多様化による需要増大による成果の向上が抽出できた。アライアンス形成によるネットワーク構造の変化は、船社においては密度の経済性と範囲の経済性による経営成果の向上につながっているが、航空においては密度の経済性ではなく範囲の経済性ないしネットワークの経済性に経営成果が大きく依存しているといえる。
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