海外での学会発表や国内での研究会での討議を経て改訂され完成した論文、"Trans-boundary Pollution and International Migration"は、Review of International Economicsに掲載されることが決定した。これはCopeland and Taylor(1999)の2国2財2要素モデルに越境汚染を加えた静学モデルで分析を行ったものである。汚染排出抑制技術のみが異なる先進国と発展途上国の2国間で途上国が汚染排出工業財に比較優位をもち、国際労働移動の送り出し国となる。移民労働者の送金活動の有無、送金する際に2財のどちらの財で行うかによって生じる、両国の経済厚生への影響の違いを分析した。これは報告書の第1章に当たるものである。 さらに、先進工業国の工業財部門は不完全競争によって生産され、労使交渉により賃金と雇用が決定されるモデルに拡張して、新たな分析を加えた。(1)財の消費支出割合しだいでは、先進国から途上国への潜在的な労働移動の可能性があること、(2)途上国との技術格差が大きく、途上国から先進国に労働移動が生じれば、先進国の労働者の賃金は組合賃金、競争賃金いずれも上昇することなど、直感に反する面白い結論が導かれた。これは報告書の第2章に当たる。
|