本研究報告書は、「中東欧諸国における日系企業の生産分業体制の展開についての計最分析」をテーマとして2003年度(平成15年度)〜2005年度(平成17年度)の3年間にわたる研究成果をまとめたものである。3年間の研究は、以下のごとく3つの柱(1)当該地域における日系企業の事業活動についての訪問調査、(2)関連研究を行っている海外研究機関・研究者との研究交流、(3)実証分析に基づき進められた。 (1)自動車関連企業を中心に計16社の日系企業を訪問し(うちハンガリー5社、チェコ4社、ポーランド7社、ベルギー1社)、製品の販路、投資資金・原材料の調達方法、経営管理方式などの諸点についてヒアリングを行った。主要日系企業への調査訪問を通じて日本企業がでアジア、北米に続きEUにおいてどのような形で4極生産体制を構築しようとしているのかについて一定程度明らかにすることができた。 (2)従来の研究成果、および(1)の調査研究で得られた分析結果をもとに、中東欧諸国の研究機関との研究交流・報告討論を進めた。訪問した主な研究機関は、オーストリア経済研究所(WIFO)、応用システム分析研究所(IIASA)、国際比較経済研究所(WWIW)、ハンガリー科学アカデミー世界経済研究所、経済研究所、チェコインベスト、ポーランド投資促進機関などである。研究交流・討論は、資料収集の方法、および当該地域での分析手法の妥当性を確認するうえで非常に有益であった。 (3)(1)、(2)に基づく実証分析の中心は、中東欧諸国の日系企業の事業活動に関わる第2部における2編の論文であるが、日本企業の海外進出をめぐる考察および、実証分析として第1部では直接投資の経済効果について3篇の研究成果を掲げている。 本研究では、中東欧諸国における日系企業の事業活動についてその特徴を含めて様々な角度から考察することができたが、アジア地域との比較研究、日系企業のEUにおける競争力の解明など重要な研究課題は残されている。今後も当該地域における実証分析を継続的に進めていきたいと考えている。
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