本年度は、典型労働者と非典型労働者を対象とした共通設問による意識調査を二次にわたって実施した。第1回目の調査(略称「信頼アンケート」)は自らの就業上の地位や労働時間などに関する意識と勤務先への「信頼」に関する意識を中心にした95項目にわたるアンケート調査である。回答者数は典型労働者2462名、非典型労働者1100名である。典型労働者と非典型労働者の回答結果に関する比較分析と非典型労働者の回答結果に関する多変量解析を行い、以下の事実が明らかになった。 (1)典型労働者と非典型労働者の間で、あるべき雇用形態に関する規範意識が大きく異なっているわけではない。 (2)典型労働者、非典型労働者ともほぼ同様に10年前と比較して勤務先企業において従業員と企業との間の信頼関係が低下している、という認識を示している。 (3)過去10年の間に、非典型労働者に対しても成果主義的な賃金制度の適用が強化されるようになっている。 (4)非典型労働者の一部に、勤務先での継続雇用にはこだわらないが、現在の職種の継続や現在の職種における能力開発にこだわる一貫した傾向を有するプロフェッショナル型の職業意識を有する集団が析出された。 (5)上記のプロフェッショナル型非典型労働者には、他の非典型労働者と比較した場合に統計的な有意差として発見される特性として、転職回数の多さ、労働時間の長さ、勤務先の人事労務思索への批判的な姿勢の強さ、などの特性がある。 第二回目のアンケート調査は、スエーデンウプサラ大学の研究者との協力による国際比較調査であり、スエーデン側調査が終了する平成18年度に、解析作業を開始する。
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