研究課題
本年は、以下3つのことを行った。まず1つ目は、昨年執筆したタイ論文の修正である。タイ開発研究所所長のチャロンホップ博士の貴重なるコメントを受け、修正を行った。特に、(1)企業の立地選択において、輸出産業と国内向け産業にわけて考える必要性があること、(2)政府の地域開発政策の中で、税制のみならず、工業団地等のインフラ開発といった広義の意味での企業立地政策を考慮に入れる必要性があること、及び、(3)説明変数間における多重共線関係の問題の指摘を取り入れた。なお、計量モデル導出にあたっては、空間経済学の研究成果も取り入れた。次に、マレーシアの企業立地選択について、州別に考察を加えた。中国やタイと同様、マレーシアにおいても外資系企業の方が地場系企業に比して立地がある一定の地域に集中する傾向が強いことがわかった。しかし一方、マレーシアはタイや中国と比べると外資系企業、地場系企業ともに、ある一地域への集中度は低く、よりバランスのとれた地域開発につながっていることもわかった。ただし、マレーシアの場合は、詳しいデータが入手できず、非常に大まかな分析にとどまった。最後に、日本企業の海外投資に着目し、国境を越えた企業の投資活動の国別配分がどのような要因でもって決定されるのかについて、考察を加えた。まず、一般的にいわれるように、日本企業の海外直接投資の国別配分にはかなり偏りが見られることがわかった。また、予想に反して、どの産業においてもある一定の国に集中する傾向に差異はなかった。さらに、産業の中で最もグローバル化が進展しているといわれている電子・電機産業に絞って、日本企業の国別立地要因を探った。以前、立地要因の1つとして重要視された未熟練労働者の低賃金は、90年代以降、説明力を失った。それに代わり、熟練労働者の存在や、産業集積度が日本企業の海外立地要因として重要な役割を果たすようになった。
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Foreign Investment in Developing Countries、Palgrave Macmillan, UK. (発表予定)
State, Market, Society, and Economic Cooperation in Asia 101号
ページ: 218-232