港湾を取り巻く環境把握では、世界経済のグローバル化、規制緩和、情報化を受けて、市場経済からネットワーク経済へと移行する中で、ロジスティクス・システムとサプライチェーン(SCM)をベースとするバーチャル・コーポレーションが成立した点が重要である。それは企業のビジネスモデルに競争優位性を与え、従来のGATT・市場経済時代に優位を占めた規模の経済と市場支配力を凌駕している。WTO体制下の現代は小規模企業でも競争優位を持ちうる時代なのである[文献:「グローバリゼーションと物流の対応」]。この中で、日本における海運業の持つ革新性に比して、港湾業の劣位は顕著であり、その原因が国家の規制政策への港湾業の長期依存とハードインフラ偏重政策の継続にあり、これを打破して、すでに衰退段階にある日本の港湾業のライフサイクルを、新たな長期発展サイクル(第2ライフサイクル)軌道に誘導する視点が不可欠である[文献:「日本における国際物流業の動向と環境変化」;「日本港湾業の第2ライフサイクル創出のために」]。一方、荷主である家電業のデジタル革命への対応の相違を、製品戦略面と企業組織の二面より分析し、港湾業のサービス戦略と事業組織の課題を対比した[文献:「企業戦略と物流の競争優位」]。日本港湾業がグローバル競争優位を確保するには、量を追わず質に優れた港湾サービスの供給、つまり、高度技術革新力を持つわが国産業に適応した港湾を構築し、高付加価値貨物に関して空港と一体となったロジスティクス対応力を醸成する必要がある。本研究では、わが国の輸出貨物のプロダクトサイクル分析に基づき、現代がその革新軌道の導入段階にあることが導かれており、その現実認識を国家と国際物流業が相互に共有することが、他国と区別された日本港湾のSCM優位性を確立する道につながるのである[文献:「物流的発展階段和国際物流系統」]。
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