本研究の目的は、応用一般均衡分析に利用するためのデータとしてわが国の社会勘定行列を作成することと、それを使用して経済政策の応用一般均衡分析を行うことである。経済政策選定の際に、どの政策パッケージを採用すべきかを正確な判断するには、基本データセットを作成すると同時に、数量モデルを構築して各経済変数について政策実施前後の変化の方向だけではなく、変化の大きさをも把握できる応用一般均衡分析を行う必要があるからである。 本年度は、国民経済計算データからわが国の社会勘定行列を作成した。ここで、社会勘定行列とは、ある勘定の収入と支出を行列表示したものであり、1組の行と列(第i行と第i列)で1つの勘定(第i勘定)を表す。第i勘定への金銭タームでのインフロー(収入)データを第i行に、アウトフロー(支出)データを第i列に記入するので、行和と列和はそれぞれ収入計、支出計を表している。 われわれはこのような社会勘定行列の経済学的意味づけを考えて、社会勘定行列の勘定項目を定め、国民経済計算からいったん各勘定のT型勘定を作り、それを社会勘定行列に並べ替えるという作成手続きを検討し、表集計ソフトEXCELのマクロ・プログラムを作成した。これによって、各年の社会勘定行列をほぼ自動的に作成することが可能になり、社会勘定行列の時系列を使った乗数分析が容易にできるようになった。
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