研究概要 |
南北問わずに少子高齢化が進んでいるが,少子化対策としての出生率の回復は,誤った政策であり,かえって資源エネルギー消費の拡大から環境問題を悪化させてしまう。つまり,人口増加に伴う弊害除くことが持続可能な開発にとって重要であり,ジェンダー平等,リプロダクティブ・ヘルスが人口抑制と人間環境改善にともに結びつく親和的政策である。他方,国内人口移動の流れを都市化の中で把握しつつ,都市インフォーマル部門,フィリピンとインドネシアの地方の貧困の実情を明らかにした。また、タイの家内工業の特徴を押さえた上で,調査に基づいて,農業,女子労働と関連が深いシルク生産の実態を明らかにし,個人経営体・内職者が柔軟型ネットワークによって結びついていることを示した。さらに,地球温暖化の要因である温室効果ガスを削減できるようなエネルギー政策を,産業,民生,運輸,発電について考察した。また,エネルギー政策の実効性を高めるにために,インセンティブ型環境政策として,排出権の取引,GEF,炭素税などを議論する。そして,再生可能エネルギーの開発が社会開発と環境保全に有効なことを示した。さらに,熱帯林を取り上げ,熱帯林減少の要因として,従来の見解が,薪炭生産と焼畑を過大評価し,用材生産と企業的フロンティア開発を過小評価していること示した。そして,地域コミュニティの管理するローカル・コモンズとしての熱帯林では,コモンズの悲劇やモラル・ハザードが抑制され,適切な管理が行われる可能性が高いことを論理的に明らかにした。日本との関連では,アジア廃棄物の排出と処理を概観した上で,規制の限界を指摘した。そして、廃棄物抑制のために廃棄物処理有料化、デポジット制度、バージン資源への課税が有効であるが,アジアでは低賃金を活かした労働集約的なマテリアルリサイクルが盛んであり、これと日本のゴミ輸出が関連していることを示した。
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