研究概要 |
資源エネルギー・土地・水・大気など自然環境によって賦存量が定まっている本源的資源と環境問題のかかわりは,(1)本源的資源の収奪的利用による環境悪化,(2)本源的資源の利用可能性の低下,(3)本源的資源の利用に伴う排出物・廃棄物による環境悪化,と整理できる。所得分配の不平等を踏まえれば,貧困者1人が利用できる本源的資源は,貧困層の人口急増と並んで,富裕層の人口増加によって,大幅に減少する。したがって,途上国よりも先進国の人口増加は,資源エネルギーの消費急増となって本源的資源への人口圧力を高め,貧困者の資源利用可能性を引き下げる。他方,少子長寿化がもたらす利益は,(1)総エネルギー消費や廃棄物排出の減少と土地・森林・漁場・水への人口圧力の低下による地球全体への環境負荷の引き下げ,(2)1人当たりの土地や森林の利用可能性の拡大による生産性とアメニティの向上,(3)学齢児童の減少による1人当たり教育サービスの向上,が指摘でき,持続可能な開発にも貢献する。 アジェンダ21では,人口と生産の増加が地球の資源エネルギーに圧力を加えていると指摘し,持続可能な開発と人口問題を統合して扱うことを求めている。そこで,社会開発を進めて、少子化を促すことは,1人当たりのインフラ・本源的資源の利用可能性を拡大しつつ,環境への総負荷を引き下げることに繋がり,環境保全に有利である。また,そこで,途上国でも、ジェンダー平等化,リプロダクティブ・ヘルスとプライマリー・ヘルスケアの充実は,女性の社会進出の機会を確保し,乳幼児死亡率の引き下げ,避妊実施機会の提供を促すことで,人権の確立に配慮しながら,出生率を引き下げることが可能になる。グローバルな視点からは,持続可能な開発と親和的な人口抑制政策が必要であり,これは,人権保護に配慮したジェンダー平等化,リプロダクティブ・ヘルス,プライマリー・ヘルスケアの充実であると結論できる。
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