本研究は、マラヤ/マレーシアの経済発展における『労働者』に関して、その意味と性格の変化について分析、検討することを目的とし、マレーシアおよびイギリスの史料やデータ、文献などの収集とフィールド調査をおこなうことを課題としている。とくに19-20世紀の大きな構造変化を見据え、マラヤ/マレーシアの「労働者」、「労働力」、「労働」を分析し、具体的な議論の中から開発途上国の歴史的な発展における「労働者」像を描き出すことを意図している。 2003(平成15)年度は本研究の初年度でもあり、海外学術調査である前研究課題(課題番号12572020)においてマレーシアおよびイギリスで収集した史・資料を分析することと並行して、労働者の生活と社会保障政策やソーシャル・セーフティ・ネットの検討・分析、ジェンダーと移民労働の分析など、サブ・テーマとしての分析も深めた。また比較研究として、2003年8月にはフィリピンのマニラのインフォーマル部門(スラム)、西ネグロスのサトウキビ農園の調査も行った。そして来年度以降の研究の発展のために、2003年2-3月にはマレーシアとシンガポールで調査を行い、国際ワークショップにおける研究成果の報告および議論、マレーシア移民庁の担当官に対するヒアリングや資料収集に加えて、マラヤ大学、マレーシア国民大学、シンガポール国立大学(NUS)などの主要研究者との意見交換と研究交流も進めた。 2003年度における本研究テーマに関連する国際会議や研究会での報告で主なものは、国際会議「グローバリゼーション、国家、共同体:アジアの視点から」(早稲田大学国際会議場、2003年9月)、「マレーシアの労働市場」アジアの労働市場研究会(早稲田大学)(2004年1月)、国際ワークショップ「Contemporary Perspectives on Asian Transmigrant Domestic Workers」(NUS、2004年2月)などがある。
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