資料、統計の収集、及び調査から以下の点が明らかになった。 第一に、競争力とイノベーションの関係を明らかにするため、IMDの競争力指標についてみると、日本は大規模国30国中11位である。日本では教育面での順位が低い一方で、R&Dの比率などではトップである。つまり、イノベーションの量では力を持つが、その運用に問題がある。 第二に、欧州ではEUを世界で最も競争力が高い地域にするという、リスボンアジェンダが2000年に出され、この目標に向けてR&Dの対GDP比を日本並みの3%に引き上げようとしている。1993年以降、競争力の強化するイノベーションシステムの確立を目指す欧州において、規模も拡大する方向である。制度面では各国の特許システムの調和、競争省をEUに設けるなどのアイデアが出され、これらはイノベーションシステムを支える一貫と考えられる。 第三に、これまでの研究からグローバリゼーションの進行につれて、イノベーションシステムの伝播の可能性が指摘されたが、ヨーロッパにおけるイノベーションシステムの伝播について、そのレセプターとして中欧地域の実態調査を行った。調査先は、Berlin、Budapest、Timisiora(Romania)地域であり、それぞれ地域開発及びイノベーションの責任者に対する聞き取り調査、資料収集を実施した。結果、現状では、投資の拡充を計る政策の一環として、イノベーションが重視されているが、特定のイノベーションシステム伝播には至っていないことが確認された。また各国のイノベーション関連の機関を結ぶネットワークとして、IRE-IRC NetworkなどNGOが重要な役割を果たす。 第四に、日本国内のクラスターにおいて、そのイノベーションシステムを支える政策については、インフラ整備などのハード面から、人的ネットワークなどソフト面への転換が進んでいる。
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