研究課題
平成16年度は、ジャスミン・ライスに関する栽培面積、生産量、輸出量などに関する基本的な統計の収集を継続した。そのために、タイ国商業省(外国貿易局・国内商業局・図書室)、農業・協同組合省(農業研究局稲研究センター、農業振興局、農業経済事務所、土地開発局)、カセサート大学、タマサート大学、チュラーロンコーン大学等で生産・輸出統計の収集につとめた。特に、タイ国内全県に関する県別の品種別稲栽培状況(栽培面積と生産量)の時系列統計を入手し、その整理と分析に取り組んだ。さらに、2004年5月には、バンコクで開催されたタイ国米輸出業協会主催のThailand Rice Convention 2004に参加した。この国際会議は、タイ国米輸出業協会を構成する国内の主要な米輸出業者と香港、欧米、インド、アフリカなど海外の主要なタイ米輸入業者らが一堂に会し、世界の米貿易動向やタイ米経済の現状と今後を検証する重要な会議であった。米輸出業協会会長ウィチャイ・シープラサート氏をはじめ、ジャスミン・ライスの輸出に特化するチアメン社(Chia Meng Group)やタイ国最大の米輸出業者であるキャピタル・ライス社(Capital Rice Co)の経営者などタイの米業界を代表する企業家達と直接タイ米の現状と今後について意見交換する機会を得た。また、香港最大の米輸入業者Golden Recourse Development International(金源国際米業公司)の役員に対しても香港におけるジャスミン・ライスの輸入状況等についてインタビューをする事が出来た。こうしたタイの米ビジネス関係者との議論をふまえ、今年度後半では、タイ国商業省がいわゆるThai Jasmine RiceまたはThai Hom Mali Riceとして輸出することを許可している米の品種カーオドークマリ(Khao Dok Mali)105に関わる諸問題についてさらに深く分析を行った。その重要な論点は、タイ国農業・協同組合省農業研究局稲研究センターが研究開発し、2000年以降栽培奨励がされてきた品種パトムタニ(Pathumthani)1の動向である。この改良品種は、中部タイで収穫可能で、しかも単位収量も高く、二期作が可能というもので、その生産が急速に拡大している。このパトムタニ1の栽培は、これまでカーオドークマリ105の栽培には不適であった中部タイの農民に大きな利益をもたらすと予想されているが、香りで劣り、しかも大量に生産されているため、タイ産の香り米、っまり、ジャスミン・ライスの相場を崩し、ひいては品質への評価を低下させる危険性も指摘されている。本研究では、こうした改良品種の栽培拡大と、タイ政府、なかんずく商業省の新しい品質基準の設定など、官民合わせたさまざまな対応を検証し、タイの米経済、ひいてはタイの農業への影響を考察した。
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IOC UT Symposium, Sugar, Coffee, Tea and Rice in Economic History of Modern Asia. Interim Reports
ページ: 3-17