平成15年度の研究は、研究計画通り、まず「老華僑」と「新華僑」の所在国および中国における経済活動などに関する資料の収集・分析から着手した。主な調査・研究内容と実績は次の通りである。 1)先行研究や統計資料の収集を通じて、「老華僑」と「新華僑」の地域分布および所在国での経済・社会地位を整理・比較している。特に、中国経済に対する影響力が増している米国と日本における「新華僑」について、詳細な資料を入手したうえ、その規模、人口学特徴、職業構成、所得状況などの分析を進めている。 2)現地の研究者・政府機関の協力を得て、上海経済圏出身者の海外留学先分布と留学後の就職・居住地、帰国創業状況について、約240の海外留学者関係世帯を訪問し、調査結果を集計した。 3)中国の統計資料や現地調査に基づいて、「老華僑」と「新華僑」の対中投資の特徴(産業構造、地域分布、経営方式など)と差異を分析している。特に、中国各地の人材誘致政策と「留学生創業区」の実態とについて、豊富な資料を収集した。 4)上海・北京・広州など大都市におけるハイテク産業や多国籍企業などで活躍している「海亀派」と呼ばれる新華僑の一部(企業または個人)を(今後数年間)追跡調査の対象として選定しており、「新華矯」の中国経済への影響をミクロの視点でも考察している。 5)以上の調査・分析に基づいて、数本の論文を完成した。そのうち、2つの投稿論文(英文1つ、和文1つ)は学術誌に掲載されたまたは掲載される予定となっており、他の2つの論文は国際東アジア研究センターのワーキングペーパーとして刊行されている。
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