本研究は国際金融資本市場における開発途上国の借入諸条件や起債諸条件の規定要因を専らの研究対象とするものである。とりわけ、借入国・起債国についての経済面での脆弱性、社会面の不安定性、政治面での不確実性などといった所謂カントリーリスク要因が、資金調達の諸条件のなかに充分にリスク・プレミアム等として反映されているかを解明するものである。 この分野の既存研究の多くが専ら経済変数にだけ注目しているが、本研究は社会変数、政治変数なども含め計量的分析の中で解析する。 本年度は予定通り、社会変数、政治変数などを中心にモデルに取り込むデータの入力・整備を行い、また国際金融資本市場での開発途上国による資金調達の個別案件データを収集・入力する段階としている。併せてこの研究分野の既存文献をレビューしている。国際金融実務の面では重要視されているが既存研究では無視されてきた政治変数などが、借入・起債の諸条件に充分に反映されているかの本実証分析における確認は、現在の分析段階では必ずしも明瞭な解をえられていない。 現時点までの分析では、債券のyield spreadと銀行融資のspreadに関わる規定要因として、liquidity and solvencyまたmacroeconomic fundamentalsに関連する変数については、両者に共通する変数が殆ど見られないこと、また、それらに関わる規定要因として、調達・融資の金額や満期限については、統計的有意性が確認できなかったことなどがあげられる。今後モデルの精緻化を図りながら、社会変数、政治変数などをモデルに含め吟味する予定である。
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