研究概要 |
15年度は、経済発展と通貨危機のメカニズムを国際投資家の最適ポートフォリ行動の観点から解明した基本モデルを学術雑誌に発表するためにレフリー等のコメントを参考にしながら完成を目指している。この論文の目的は、ファイナンス理論で展開された最適ポートフォリオ理論と戦略的補完性に基づいた複数ナッシュ均衡理論を結びつけ、国際資本移動と経済発展および通貨危機の関係を研究するものである。特に明記すべき成果は、複数均衡間の移動にかんする動学式を明示的に表現することによって、複数均衡の構造変化メカニズムと複数均衡間の移動メカニズムに関する包括的な記述を可能にしたことである。また、国際金融市場における完全競争の仮定が、協調の失敗の背景にある点をより明確にしたことも重要な成果である。さらに、最近の文献との関連付けを、より明確にするために必要な修正を加えている。 研究の次の段階として、基本モデルを動学化するために、Brownian Motionを仮定したStochastic Optimal Controlの手法を応用するための研究も行っている。この研究を通じて、ファイナンス理論(Stochastic Optimal Control)とゲーム理論を結びつけることによって、最適国際投資行動の動学化およびJump Markov Processes理論を応用した複数ナッシュ均衡の動学化をめざしている。同時に、動学モデルをシミュレーション分析するための準備を進めている。数学分析ソフト(Mathematica, Excel等)を利用し、さまざまな確率的シミュレーションの手法を学んでいる。最終的には、正規分布擬似乱数を利用してBrownian Motionを生成し、それがどのように国際投資家の動学的最適化行動の下で、経済離陸(Takeoff)と資本逃避(capital flight)の実現に関係してくるかを確率論的に明らかにする計画である。
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