本研究の目的は、基本モデルを動学化し、その動学モデルを使ったシミュレーション分析を通じて経済離陸と通貨危機の確率論的特性を分析することである。そのために、基本モデルの動学化に向けて、Brownian Motionを仮定したStochastic Optimal Controlの手法を応用する研究をおこなった。具体的には、ファイナンス理論(Stochastic Optimal Control)とゲーム理論を結びつけるために最適国際投資行動の動学化へ向けての試みを行った。現在、動学モデルの完成に向けて進捗中である。次の段階であるJump Markov Processes理論を応用した複数ナッシュ均衡の動学化は、次年度に試みる計画である。 また、基本モデルの動学化を通じて、決定論的な複数均衡問の移動という接近方から確率論的な複数均衡間の移動という接近方に拡張するための研究準備を行っている。基本モデルおよび動学モデルを完成させるために、確率論、シミュレーション、ファイナンス分野の文献を読み必要な技術を学んだ。同時に、動学モデルをシミュレーション分析する準備を進めた。数学分析ソフト(Mathematica等)を利用し、さまざまな確率的シミュレーションを始めた。この研究を踏まえて、次は、正規分布擬似乱数を利用してBrownian Motionを生成し、それがどのように国際投資家の動学的最適化行動の下で、経済離陸(Takeoff)と資本逃避(capital flight)の実現に関係してくるかを確率論的に明らかにする試みに向けて進捗中である。
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