本年度は、標準的な世代会計において、最薪のデータの基づき我が国の推計をバージョンアップし、最新の世代間の不均衡について明らかにした。この点について、2003.10.25に第60回日本財政学会(関西大学)にて「世代会計による財政構造改革のタイムリミットに関する研究」という形で、本年度の研究成果をとりまとめて報告した。その結果、国民負担率の観点からすれば、国民負担は減少しつつあり、より若い世代の負担は改善され、高齢者の受益が増加するという、一見好ましい変化があったかのように見えることがわかった。しかし、世代会計のアプローチで見れば、ここ数年の財政政策、社会保障政策に基づく所得再分配状況の変化は、政府債務の割引現在価値を増加させ、将来世代にとっては負担を増加させる影響を及ぼし、逆の効果をもたらしていることが明らかとなった。 次に、この不均衡を解消するため、今後の財政改革のシナリオについて、改革時点を先送りにすればするほど、将来世代にとって望ましいシナリオが選択される確率が低下することがわかった。 また、峯木高志氏との共同論文「効率的資産形成を通じた老後の生活資金に関する研究」は、2003.09.27第57回東北経済学会(富士大学)にて行った報告を取りまとめたものであり、これまでゼロ・サムゲームの下で公的年金改革による世代間の不均衡の解消の考え方から、公的年金と住宅資産形成を連関して分析し、最適な資産形成を通じてプラス・サムとなるような政策の可能性について分析した。 最後に、本年度では動学的世代会計を推計するためのOLGモデルを、従来のFORTRUN、C原語等の複雑なシステムに代わって、簡便で効率的かつ高速に推計するため、TSPやEXCEL等を用いたコンピュータ計算手法の開発も行った。
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