最終年度の2005年度においては、これまでの研究成果のまとめを行うとともに、以下のような研究を行った。三位一体改革により、国からの移転である国庫支出金が4兆円削減され、最終的には地方への税源移譲が3兆円程度行われることになった。マクロ的な地方分権促進の観点からは、ひも付きである国庫支出金削減を地方税に振り替えることは一般的には望ましい効果を有するはずである(「『三位一体の改革』の経済学的評価」(共著)2004年5月日本地方財政学会第12回大会で報告済み)。一方で、ミクロ的には、国庫支出金および地方交付税の財政調整効果が弱まると、地方税・財源の格差が十分には縮小されず、また今後拡大するのではないかとの指摘がある。 これらの点に関し、以下のような観点から研究を行った。1)国と地方財政の抱える長期債務残高縮小は当面の目標としては難しく、プライマリーバランス黒字化を目標とすべきこと、2)プライマリーバランス赤字でみると、国分がほとんどであり、地方財政はほぼバランスしている、3)しかし、国から巨額の財政移転を受けている地方財政の改革なしには国財政の改善も難しいため、地方歳出削減も必要であり、その手法としてニュー・パブリック・マネジメント(NPM)手法を活用すべきこと、4)このような観点からすれば、三位一体改革の評価は、税源配分の現状からの乖離でのみ評価するべきでなく、別の指標が用いられるべきこと、5)そのためには、望ましい税源配分の原則に立ち帰り、現行の税源配分を見直す必要があること、などを明らかにした。また、国から与えられた税源では十分でないし、また受益と負担の関係をより密接にするためには、地方団体が独自の税源を模索することは、中期的には望ましい。このような例として、高知県の森林環境税や兵庫県の県民緑税を取り上げた。研究成果の一部は「財政再建論議と広がる地方税財源の格差〜進む分権改革の中でその対応を探る〜」として、『税』に掲載された。
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