研究課題
現在わが国で急速に進行している少子高齢化・人口減少は、財政および社会保障制度に深刻な影響を与えている。少子高齢化が進行し、人口が減少し始め、経済成長も鈍化するのに伴って、既存の制度の持続可能性に問題が生じている。本研究の目的は、わが国の財政・社会保障制度をこのようなドラスティックな構造変化に対応させるための具体的な改革案を提示することにある。少子高齢化・人口減少という構造変化を織り込んだ分析を行うために、Auerbach and Kotlikoff(1983)によって開発されたライフサイクル一般均衡モデルによるシミュレーション分析の手法を用いて定量的な分析を行っている。今年度は、わが国における今後の公的年金制度の改革の方向性についての指針を得るべく、公的年金における所得の再分配に関して、現行のわが国の基礎年金方式と、スウェーデン型の年金制度である最低保証年金方式の比較を行った。シミュレーション分析の結果、必ずしも最低保証年金方式が望ましいわけではないことが示唆された。制度変更に伴い、租税部門から年金部門への税移転額が変化するが、その財源調達法(すなわち、どの税目によって税収の調整を行うか)が決定的に重要であることが示された。消費税の税収に占める比率が高い場合に社会厚生が高くなり、逆に、利子所得税の比率が高い場合に社会厚生が低くなった。これは主に、消費税が相対的に最も資本蓄積を促進し、逆に、利子所得税が相対的に最も資本蓄積を阻害することに因るものである。また、わが国の現行の公的年金制度と同規模の年金制度を想定した場合には、公的年金を基礎年金のみに限定し、それを消費税で賄う場合に最も高い社会厚生が達成された。このとき、年金保険料は廃止されるが、その代わりに、消費税率が約14%にまで上昇することが示された。
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独立行政法人経済産業研究所,ディスカッションペーパー 06-J-056
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