研究概要 |
過去2年間の研究成果に基づき,平成17年度は内外の審査制の雑誌および書籍に投稿を行った。 (1)赤石孝次[2005,10] 福祉国家への一般消費税への依存が国際的に進む中で,日本の同税への依存が低位にとどまっている理由と帰結を,歴史的新制度論と社会契約論を結合することで明らかにした。第1に,日本では,単記非委譲式中選挙区制度のもとで,雑多な利益集団の支持を得るために,自民党はそれらとの間に一連の社会契約を取り決めてきた。しかし,このことは,政治エリートが短期的なコストを課すことを妨げ,寛大な福祉国家建設と引き替えに逆進的な税負担の増大を受容する,という西欧的な租税政策を展開することを困難にした。第2に,日本的な制度的枠組みの中で重視された生産者重視の政策は,政府の再分配機能に対する国民の理解を矮小化させ,政府の役割に対する彼らの不信を定着させ,政府が福祉国家の財源として消費税の負担を引上げることを困難にした。 (2) Sven Steinmo and Takatsugu Akaishi[2006,forthcoming] 戦後,平等性を強調しながら,高い経済成長を実現し,低い失業率を達成してきたという共通項を持ったが,スウェーデンは高い消費税負担を課すことに成功し,日本はそれほど成功しなかった。これらの偏差を生み出した要因を明らかにすることで,グローバリゼーションに基づく税制の収斂化仮説には留保がつけられるべきことを明らかにした。課税水準の低位収斂化競争に向けたグローバリゼーションの圧力にもかかわらず,日瑞両国の経済組織の組織方法と政治の制度的配置の偏差が,両国の利害の認識に関する偏差に導くことで,税制の偏差を生み出した,と考えられる。
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