研究概要 |
平成16年度は15年度に引き続き、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた確率的ボラティリティ変動(Stochastic Volatility ;以下,略してSV)モデルの推定法について研究を行うとともに、SVモデルの改良を行った。また、近年、欧米を中心に日中データを用いた新たなボラティリティの推定法であるRealized Volatility (RV)に注目が集まっているが、日本の株式市場の日中のボラティリティ変動やRVについても研究を行った。 (1)SVモデルの推定法の開発とモデルの改良 SVモデルをマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて推定する場合、ボラティリティをサンプリングしなければならないが、平成15年度よりボラティリティの効率的なサンプリング法としてMulti-move samplerの研究を行っていたが、それがWatanabe and Omori (2004)としてBiometrikaに掲載された。この方法については、渡部(2005)(「マルチ・ムーブ・サンプラーを用いた確率的ボラティリティ変動モデルのベイズ推定法」和合肇編『マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた応用計量分析』第9章)で、詳しく解説している。Shibata and Watanabe (2004)は、SVモデルとマルコフスイッチング(MS)モデルを組み合わせてボラティリティの平均がスイッチするMSSVモデルに発展させている。また、株式市場では株価が上昇した日の翌日よりも下落した翌日の方がボラティリティがより上昇する傾向があり、Omori, Chib, Shephard, Nakajima (2004)は、こうしたボラティリティ変動の非対称性を考慮に入れた非対称SVモデルの推定を行っている。 (2)日本の株式市場のボラティリティの日中データを用いた分析 渡部(2004)は、日経225先物の価格、ボラティリティ、取引高の日中の時間帯による特異性について分析している。また、柴田・渡部(2004)は、もう一つのボラティリティ変動モデルであるARCH型モデルのボラティリティの説明変数にRVを加えることにより、将来のボラティリティの予測精度が向上することを示している。
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