研究課題
基盤研究(C)
1.ボラティリティ変動モデルの改良と推定法の開発確率的ボラティリティ変動(SV)モデルをマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)を用いてベイズ推定する場合に、ボラティリティを事後分布からサンプリングする必要があるが、その効率的なサンプリング法としてShephard and Pitt(1997)が提案しているmulti-move samplerに間違いがあることを指摘し、正しいmulti-move samplerを提案した。また、SVモデルを発展させたモデル(誤差項の分布が正規分布でないSVモデル、非対称SVモデル、マルコフスイッチングSVモデル、動学的2変量分布混合モデル)のMCMCを用いたベイズ推定法も提案した。さらに、GARCHモデルについても新たなMCMCを用いたベイズ推定法を提案し、この推定法が効率的であることを示した。GARCHモデルのパラメータは最尤推定できるが、MCMCを用いてベイズ推定することには、それによってパラメータの推定誤差まで考慮に入れた将来のボラティリティの予測やオプション価格の評価を行えるというメリットがある。2.日本の株式市場のボラティリティ変動の実証分析TOPIXの日次データを用いて実証分析を行い、SVモデルの誤差項の分布にはスチューデントのt分布が最も当てはまりが良いことを明らかにした。また、TOPIXの週次データにマルコフスイッチングSVモデルを当てはめることにより、TOPIXのボラティリティの平均にスイッチが生じていることを明らかにした。これらの結果は、日本の株式市場のボラティリティ変動を記述するには、通常の確率的ボラティリティ変動モデルでは不十分であり、誤差項の分布や平均のスイッチを考慮する必要があることを示しており、重要である。さらに、確率的ボラティリティ変動モデルに取引高を加えて発展させたモデルに動学的2変量分布混合モデルがあるが、日経225先物市場の価格と取引高の変動はこのモデルではうまく捉えられないことを明らかにした。3.ボラティリティ変動モデルを用いたオプション価格の評価MCMCを用いてベイズ推定することで、GARCHモデルの下でパラメータの推定誤差まで考慮に入れてオプション価格を評価する方法を提案した。また、日経225オプションデータに応用することにより、この評価法が、ボラティリティを一定と仮定するブラック=ショールズ公式を用いた場合と比べて、おおむねパフォーマンスが良いことを示した。
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Nikkei Econophysics III Proceedings
Journal of the Japanese and International Economies
Nikkei Econophysics III Proceedings (forthcoming)
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