わたくしは「研究目的」を、「1930年代以降、今日にいたる管理通貨制下の為替相場変動の長期的な動態を……検証」し、「為替相場の『本来の』動きというものは何か、またそれが『人為的な』政策によってどのように偏倚するのか、法則と政策との兼ね合いについても理論的・実証的に明らかに」すること、と設定した。 本年度は、前半期において昨年度と同様、理論的・歴史的文献の探索・調査・収集をおこない、また後半期においては、そうした資料を基に、戦前から大戦間、さらに戦後にわたる長期的な統計を作成し、史的実例や近年の研究成果の把握につとめるとともに、昨年の「実績報告書」末尾にも記したような、「戦前にまでさかのぼり、金融史的・為替政策的にひろい範囲での研究」に取り組むことができた。 ここ数ヶ月のあいだ「第3次円高の到来」が取り沙汰され、世間の耳目をひいている。今年2005年は「プラザ合意」からちょうど20年の節目にあたっており、マスコミなども様々な関係記事を発信しているが、1980年代後半における急激な円高という「史実」には触れても、その「原因」に関しては皆目言及されていない。昨年出席した諸学会もほぼ同様で、研究者の回答は、「日本の巨額な対米貿易黒字」といった在り来たりなものであった。しかし当時のわが国の「対米資本収支」(赤字額)は貿易収支(黒字額)をさらに上まわっていたのであり、結果、総合収支は「赤字」だったのである。先の円高は、国際収支説ではけっして説明できないのである。本年は科研費補助金の最終支給年度であり、実りある成果の実現につとめたい。
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