研究課題
基盤研究(C)
1980年代における日米為替相場の変動の総体、つまり、前半のドル上昇と後半の急激なドル下落を、「統一的に」説明した経済理論はない。「実効実質為替レート」の算定によって、「80年代末において、為替相場は80年代はじめの水準に復調したにすぎない」という実証的研究はあるが、「なぜそのようになったか」は説明されていない。この研究の目的は、外国為替相場変動の長期的な動態を、為替相場変動の2要因、すなわち、国際収支の変化という「実質的」要因と、物価水準の変動という「名目的」要因にもとづいて検証した後、80年代の日米為替相場変動を整合的に説明することであった。この3年間、文献の収集、関係者への聞き取りなどを行なうとともに、資料などの分析にもとづいて、歴史と理論の両面から、為替相場と為替システムの実相と本質を探り、独自の知見の獲得に努力した。成果の中心は以下である。1980年代のドル相場は、70年代後半から続くインフレーションの下、本来なら他通貨に対して全面的に下落すべきだった。しかし、高金利政策による外資流入(資本収支の大幅な黒字)によって上昇し、異常なドル高を出現させた。それが、プラザ合意にもとづく各国の協調利下げによって下落に転じたのであるが、意外にも、外資の逆流(資本逃避)は生じなかった。80年代後半のドル安は、高金利の解除による外資の流出(資本収支の黒字の減少または赤字化という国際収支の要因)では説明できない。問題は実は、米国の対外事情にではなく、国内事情にあった。インフレーションのもと、ほとんどの国内商品が価格を上昇させる中で、外貨だけは例外的な低価格商品であった。「ドル高」とは「外貨安」に他ならない。高金利政策によって、それまで「貨幣市場」にクギ付けされていたドルは、解除によって低価格商品市場である「為替市場」へと怒濤のように流れ込んだ。ドルによる外貨買いは、外貨の価格である為替相場を、昂騰へとみちびく。急激なドル安は、純粋に国内的な要因によって発生した。政策は法則を歪曲できるが、解消しない。法則は別のところへ、違った形態で転移する。政策は結局、客観的な経済条件によって改変と復旧を余儀なくされる。
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工学院大学共通過程研究論叢 第43-2号
ページ: 11-27
KOGAKUIN DAGAKU KYOTSUKATEI KENKYURONSO-Kogakuin University Bulletin-General Education No. 42-1
工学院大学共通過程研究論叢 第41-2号
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工学院大学共通過程研究論叢 第42-1号
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金融経済研究(日本金融学会編) 第20号
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Japan Society of Monetary Economics, Review of Monetary and Financial Studies No.21
工学院大学共通過程研究論叢 第40-2号
ページ: 11-21
工学院大学共通過程研究論叢 第41-1号
ページ: 13-25
KOGAKUIN DAGAKU KYOTSUKATEI KENKYURONSO-Kogakuin University Bulletin-General Education No.40-2
KOGAKUIN DAGAKU KYOTSUKATEI KENKYURONSO-Kogakuin University Bulletin-General Education No. 41-1