平成15年度は、米国地方債の実態及び制度の動向ならびに国内における債券市場や地方債の現状を把握するために、文献およびデータの収集を行った。収集と同時に、国内において、総務省、財団法人地方債協会、自治体、銀行や証券等金融機関の有力アナリスト、生保など機関投資家ならびに格付会社などへの取材や意見交換を通じて、理論的な部分に加えて、極力地方債ならびに債券マーケットの現状と課題を明らかにするように努めた。 次に、米国において地方債の発行と流通に関する現地調査を行った。地元自治体や格付会社などを訪問し、最近の米国地方債市場の現状やデイスクロージャーの実態等について取材した。米国地方債マーケットの現状とディスクロージャー制度については、地方財政学会において報告を行うとともに、専門誌に投稿、査読の結果、掲載をみている(投稿論文については、「都市問題」2003年12月号に掲載)。また、本研究では自治体のリスク顕在化の際の制度的展開についても投資家保護の観点から重要であるものと認識していたところであるが、このことに関連して、米国自治体の財政危機時点における再建・再生制度について解析を行った。この解析の成果については、別添記載のとおり学内の紀要に寄稿を行っている。また、上記成果をもとに、書籍の出版を行った。 現地調査を踏まえた新しい地方債制度の商品設計などについては、現段階では作業途中である。米国の一般財源保証債やレベニュー債の日本版については、PFI(Private Finance Initiative)との関係整理や使い分けなどに留意しながら、外部専門家と意見交換を行いつつ検討を行っている。償還年限の多様化は一部日本においても実現していることから検討は行わない。またデリバティブについてはアナリスト等の専門家との意見交換を予定している。
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