本研究(「地方債制度の再構築に関する研究-市場本位な商品設計・投資家保護制度・管理手法のあり方」)は、経済情勢については一般的に改善の兆しをみせる一方で、国内の自治体の財政状況が厳しさを増すなかで、資金調達の重要な柱の一つと位置づけられる地方債に注目し、地方漬の望ましい制度改革と運用システムの再構築を目指したものである。研究対象期間である平成15・16年度においては、もっぱら第1および第2の点を中心に研究を進めたかたちとなった 具体的には、多種多様な地方債が発行・流通する米国等諸外国の動向や債券市場の状況などを踏まえ、以下のような研究を行うことを計画した。第1に、新しい金融商品としての地方債の商品設計を行って類型化すること、第2に、かかる多様な地方債の商品化に対応して必要な、投資を促すとともに投資家を保護するための諸制度について検討し、国内の市場に導入する場合のモデルを提示すること、第3に、地方債の高度化に伴い必要となる自治体の地方債管理手法と投資家の投資手法のプロトタイプについて検討すること、の3点である。 上記研究の結果、第1に、地方債の発行・流通制度における制度の現状と課題を、市場の観点から明らかにすることで、自治体のIRの重要性を確認するとともに、今後一層の情報開示に取り組むことが多様な投資家を呼び込むために重要であること、第2に、(特に、米国の地方債制度・システムの詳細な内容把握により)地方債の一層の商品多様化と、投資家本位の制度対応が求められること、第3に、地方債市場を維持発展するために、地域金融との関係強化と応分の負担が自治体に求められること、等の知見を得ることができた。
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